左の女性画：
”AU MOINS SOYEZ DISCRET”（せめて慎み深く）
中央下段に画かれたレリーフ：目隠しをしたまま断崖に向かって歩くアモール
”il ne voit pas le precipice”（崖が見えていない）
右の男性画：
”COMPTEZ SUR MES SERMENS”（我が誓いを待して）
中央下段に画かれたレリーフ：薔薇のブーケを持つアモール
”il emporte la rose!”（薔薇を手に取った！）
フランス 18-19世紀 アンティーク 腐食銅版画
商品説明
フランスで18世紀末※〜19世紀中期に刷られた腐食銅版画（エッチング）です。
オーバル型のピクチャーフレームに飾られた肖像画の体裁で、若い男女（恋人）がそれぞれの部屋の家具調度と共に描写されています。
額縁越しに向かい合う様子が情感豊かに描かれ、お互いにアイコンタクトを取っているかのようにも見えますね。
描いたのは18世紀後期フランス王国末期に活躍したデザイナー・銅版画家のアウグスティン・デ・サン＝オービン。
銅版画家は芸術家であると同時に依頼を受けて図録･目録・挿絵・肖像など絵や図象の載った印刷物を作成することを生業としていた職人で、デ・サン＝オービンは当時のフランス国内における腐食銅版画の第一人者といって良い人物です。
オリジナルの銅版は1789年に製作され、それからフランス・パリの印刷・出版業の一大拠点だったサン・ジャクェス通り（Rue St-Jacques）の工房で生産された旨が最下端に押印してあります。
だまし絵やトリック・アートのような趣あるピクチャーフレームですが、いずれも伝統的な肖像画の体裁（額縁にあてがわれた横顔）を採りつつも、肖像というよりは寧ろ物語の登場人物の様に生き生きと寓話的に描かれています。
※…
この二作品が製作された1789年は、奇しくもフランスの第三身分（＝平民）によってバスティーユ監獄が襲撃された年でもありました。
その後ヨーロッパ全土へと波及していったフランス革命の影響により、アウグスティン・デ・サン=オービンの主要な顧客であった（貴族を含む）既存の富裕層の多くは力を失います。
作者自身は革命初期の混乱を乗り越えたものの、それから約十年ほど実質的に新規作品の製作が中断されていた為、こちらはフランス革命以前に作られた作品としては最後期の一品となります。
19世紀に入ってフランス革命の混乱が一段落すると制作を再開し、1807年に亡くなるまで精力的に創作活動を続けました。
Copyright ©KIYA ANTIQUES ONLINESHOP All Rights Reserved.