こちらはフランス製のガラスボトルなのですが、少し変わったお品物です。
まず正面に貼られているラベル。
蛇の巻き付いた杯(さかずき)が描かれていますが、これはギリシャ神話の医術の神アスクレピオスの娘で薬学の神であるヒュギエイアが持っているとされる、その名も「ヒュギエイアの杯」。
古来よりヨーロッパで薬局(ファーマシーもしくはアポテカリ―)のシンボルマークとして使われてきました。
その下にはフランス語で「バレリアン・チンキ」の文字が書かれています。
つまりこのボトルはバレリアン※(カノコソウ)から作ったチンキ剤※の容れ物だったようなのです。
いったいどういう経緯でここまで来たのか、興味が尽きません。
ボトルは手吹きガラスで作られており、底部にポンティル・マーク(ガラスを延べ棒から切り離した際に出来る切断痕)が確認できます。(画像6枚目参照)
また、ボトルの内部に白い曇りが出ていますが、こちらは古いガラスに稀に生じる「銀化」と呼ばれるガラス表面の成分変化の一種。
まだ先駆状態なので銀化による大きな変色は起こっていませんが、光を当てると反射によって玉虫色の反射光を生じます。(画像8枚目参照)
古いものですが傷は無く、ラベルも大量生産のゴムラベルが普及する以前の刷毛塗による糊接着を施したラベルですが、大きな傷や剥がれはなく美品です。